蜜林檎 *Ⅱ*
「俺からは言えない・・・
 とても、大切な話なんだ
 
 一度、帰って親父さんから
 聞いてほしい」

「わかった・・・
 話を聞きに一度だけ戻って
 荷物をまとめてくるね」

樹は、何も言わずに頷いた。

樹の心は、ある事に囚われ
今ここにある幸せに
目を向ける事ができないでいた

そう、自分には百合との間に
子供がいたという真実。
 
『何も知らなかった・・・
 
 それで許される問題なのか』

眠りにつく杏の隣で、樹は一人
深く悩む。

ただ、ひとつ分かる事・・・

雅也は絶対に、この先もずっと
樹と杏が付き合う事を
許してはくれない。

そして、樹自身も・・・

『ユリが許しても
 
 俺は俺を許せそうにない
 
 不甲斐ない俺自身を・・・』
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