蜜林檎 *Ⅱ*
樹は鏡に映る、あまりにも
不甲斐ない自分自身の姿に
呆れ果て

自信を無くしている。

そんな樹に、百合の言葉は
届く事はなかった。

樹は百合と、今度、二人きり
で会って子供の事など詳しい
話をする約束を交わした。 

そして杏は今、幼馴染だと
以前話していた男性と一緒に
帰って行った事を百合に伝え
電話をきる。

後悔しない・・・わけがない
  
樹は、杏から放した自分の
情けない両手を胸の前で広げ
見つめる。

そして、強く、強く
握り締める。

もう、この手には

・・・何もない。
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