蜜林檎 *Ⅱ*
「もちろん、そのお金はいづれ
 私からレツに渡すつもりよ
 イッキが父親である事は
 決して言えないけれど
 彼はそれでいいと言って
 くれた・・・
 レツが混乱する事だけは
 避けたいって」 

そして、樹は百合に告げた。

「俺の子供が、本当にこの世に
 いるなんて信じられない
 親父と祖父母が亡くなって
 ずっと天涯孤独で生きて
 来た俺に・・・
 この先、レツ君に永遠に
 会えなくても
 生きててくれる事
 とても嬉しく思うよ
 
 ありがとう、ユリ」

ありがとう・・・
  
樹からの感謝の言葉に、百合の
苦悩は消えてなくなる。

樹の心の中を支配する
もやもやとした思いが
百合と話した事をきっかけに
どんどん晴れ渡って
いきますように・・・

杏は、心から願う。
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