蜜林檎 *Ⅱ*
杏は今すぐ、樹の元へ
走って行きたい。
  
樹の腕に抱かれて、彼の呼吸を
感じながら眠りにつきたい。

愛しい人に触れたい・・・

樹へと高鳴る想いは、もう
止めることはできない。
 
咄嗟に、電車に飛び乗ろうと
さえ思った杏の両手には
買い物袋が握られていた・・・

杏は、気がついた。
  
このまま、何も言わずに
蒼一の家を出て行く事は
できない。

樹の元へ行くのは、一旦
蒼一の待つ家へ戻り、彼に
自分の想いの全てを話し
ちゃんと御礼を言ってから
でも遅くはない。

それから、樹の元へ行こう・・

そう決心して、蒼一を真っ直ぐ
に見つめて、樹への想いを語る
杏の言葉に蒼一の胸は蠢く・・

蒼一は、杏をそっと優しく
抱きしめた。
  
「ソウちゃん・・・
 どうかした・・・?」
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