蜜林檎 *Ⅱ*
翌朝、いつものように
朝ご飯を作り、蒼一に
手料理を振舞う杏。
 
昨日の事には、一切ふれずに
明るく蒼一に微笑みかける。

そんな杏の姿に蒼一は戸惑い
胸は痛む。
 
樹への想いを一生懸命に話す
杏は、とても綺麗で
彼女はもう、蒼一の知らない
女性だった。

そんな彼女を、どうしても
彼は・・・

繋ぎとめておきたかった。

『これ以上
 俺の知らない
 アンにならないで』

そう、強く望んでしまった蒼一
は、言葉で杏を縛り付けて
しまった。

蒼一の想いを聞いた杏は、必ず
この家を出て行く事は
できなくなる。
 
その事を、彼は承知で彼女
に告げた。

『俺の傍にいて・・・』

そして、蒼一は杏を抱いた。
< 74 / 275 >

この作品をシェア

pagetop