蜜林檎 *Ⅱ*
「イッキ、まだ
 煙草吸ってるの?
 いい加減、禁煙しなきゃ」

「明日から・・・するよ」

「マリア、イッキに禁煙は
 無理だよ」

そう断言する、圭司に樹は
苦笑しながらボーっと一点
を見つめた、その瞳に
逢いたくて堪らない女性
が映る。
 
樹は慌てて、その場を立つ。

彼女は友達に手を振り
別れた後、夜道を一人歩く。

腕時計に目をとめた後
彼女は小走りで駆けて行く。

「ケイ、これお願い
 先に二件目、行ってて・・・
 後で電話するから」

樹は杏を見失わないように
圭司に煙草を渡して
杏の後を追う。

「イッキ・・・?」
  
まりあの声は、樹には届かない

樹自身、この行動の意味が
分からない。

『今更
 
 杏に逢ってどうする・・・』
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