修羅と荊の道を行け
その政治家を会社まで連れてきて、今まで聞いたことのないような低い声で、攻めたて追い詰めていた。

気は良いがガラが悪い連中の多い中で政治家のおっさんは、バンビの様に震えていた。

その筋の事務所に連れられて来たようなものだもの。

かわいそうとは思わなかった。

逆に笑えた。

政治家を会社の隅々まで引き回されて、市中引き回しみたいになってた。

それと同じことを20歳を過ぎたばかりの子に言われてしまった。

お酒も入ってたせいで、怒りは一気にヒートアップした。

「…………よ」

「咲耶ちゃん?」

氷樹ちゃんが何かを言おうとしたみたいだけど、私は目で制して千鳥という子と向き合う。


「人の恋愛に口出しするほど、浪川くんが好きなんだ。可愛いねぇ。けど、学生時代のわがままがまかり通るほど世間は甘くないよ」


この子は可愛い。

今は恋で前が見えなくなっているだけで性格も悪くないはず。

けど言っても良いことと悪いことがある。
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