修羅と荊の道を行け
マキシ丈のワンピースを着て、薄布ショールを引っつかむとカバンを持って部屋を出た。

「咲耶、はい。出来たわよ」

母から水筒を渡された。中には氷樹先生が好きな母のハーブティーが入っている。

「気をつけて行きなさいね。それからお父さんに少しだけ優しくしてあげなさい」

「気が向いたらね」

「頑固ね。お父さんとそっくり」

母は私の背中にそういった。仕方ない、親子だもの。でも私は父親ほど融通のきかないわけじゃない。

車に乗って、氷樹先生のマンションに向かった。

マンションの前で氷樹先生が出てくるのを待っていると、どこかで見た顔がマンションに入って行く。氷樹先生の彼氏だ。あの男、今更きたのか。

「今、彼氏入って行きました」

とメールをうつと、今頃?と返って来た。本当に今頃だよ。
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