修羅と荊の道を行け
そんな事を考えていると、インターホンが鳴った。

「はいはい」

氷樹先生が受話器を取って応対すると、表情が変わった。

「え?いるの?」

いる?その言葉でさっせないほど鈍くはない。私は沙羅ちゃんを床に置くと、荷物を持った。

「じゃあ、私帰りますね。ゲームは彼氏くんとしてください」

「咲耶ちゃん、ごめんね」

「逆に助かったと彼氏にお伝えください。沙羅ちゃんバイバイ」


氷樹先生のマンションから出て、エレベーターで待っていると、開いたドアから氷樹先生の恋人、花苅和樹(かがりかずき)が降りて来た。

「こんばんわ」

「こんばんわ」

愛想がないのは、出会った頃から変わらない。


「あの、今日はありがとうございました」

何にお礼を言われているかは分かっているけど

「何が?」

とあえて聞いてみた。

「あいつを病院に連れて行ってくれて」

「出来ない約束、忘れてしまう約束なら最初からしないほうが良い」
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