修羅と荊の道を行け
ありがとうと言う、彼女はとても綺麗だった。でも何処か哀愁もあって、私はその美しい物を必死で目に焼き付けた。



「少しでも元気になってくれたかな?」

みんな帰った後、浪川くんと片付けをした。氷樹先生は私の部屋に泊まってもらっている。

「なっただろ。笑ったり声出せば少しは鬱憤も晴れるってもんだ」

「うん。ごめんね疲れてるところで」

「いや。面白かったよ。色んな業界の人と話せたし」

「やっぱり大事な日でしょ。誕生日って、それをあの男!」

怒りが再び全身を駆け巡り、拳を畳にたたき付けた。畳が思い切り凹んだ。

「うっ…。まぁ咲耶さん落ち着いて。咲耶が説教したんだ。彼女本人に言われるより堪えてるはずだ」

「そうだと良いけど」

今日だけでも、仕事より何よりも氷樹先生のことを考えていて欲しい。

「妬けるな」

突然、浪川くんに腕を引かれて押し倒された。
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