修羅と荊の道を行け
荊道7
咲耶に大好きだと言われて、思わず零れた言葉に偽りも恥ずかしさもなかった。

ただ氷樹さんに嫉妬してしまった自分が恥ずかしい。

こういう所が、自分がガキだという要因なんだと思う。こと咲耶に関しては自分をコントロール出来ない所がある。

理性がギリギリで働いて襲いかかるのをおしどめている状態だ。相手は処女だ、勢い余ってみたいな一線は越えたくない。できれば、思い出に残る様な一生忘れられない様な一夜にしたいじゃないか。

そんなことを考えて、母屋の廊下をグラスを持ちながらゆっくり歩いた。

流し台まで運んで、洗い物をする。

その時、足にモフモフした何かが飛びついて来た。下を見ると、トイプードルがしがみついていた。氷樹さんの愛犬だ。氷樹さんはいない、部屋を勝手に出てきてしまったのだろう。

「お前、よくその丸っこい手で開けられたな」

犬とは侮れない。

「何も飯なんて作ってねぇから。部屋帰って寝ろ」

首の所を軽くくすぐってやっても犬はオレから離れようとしない。
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