修羅と荊の道を行け
どうしたものかと悩んでいると、足音が聞こえた。氷樹さんだと思い、

「氷樹さん、犬ここですよ」

「ほう、ここにいたか」

氷樹さんとは正反対の低い男の声が聞こえて、頭が真っ白になった。

視界に現れたのは、俳優の南大路銀也の様な渋い、一瞬で咲耶の父親だと分かった。

「初めまして!浪川千尋と申します。咲耶さんとお付き合いさせていただいています。先日は泊めていただきながらご挨拶もせずに申し訳ありません」

土下座する勢いで頭を下げて挨拶をした。頭を下げると、犬が遊んでくれと言わんばかりに尻尾を振っている。こっちはそれどころじゃないのに。

「まぁまぁ頭を上げなさい」

穏やかな声に恐る恐る頭を上げると、

「咲耶の父の五百蔵秀一です。娘がいつもお世話になっています」

と頭を下げられて、オレも思わず頭を下げた。

「すまないね、洗い物をさせてしまって」

「いいんです。すいません、大勢でおしかけてしまって」
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