修羅と荊の道を行け
お父さんは淋しげに笑った。

「どうなることかと思ったが、君の様な良い方と巡り会えて良かった。これからもよろしく頼むよ」

と頭をまた下げられた。

「いいえ、こちらこそ」

「あれ?なんでここに」

咲耶が部屋の中に顔を出した。お父さんといると分かると、僅かに眉間にシワが寄る。

「少し話ししてただけだ。この子が部屋を出て迷っていたようだ」

お父さんは立ち上がると、犬の咲耶に渡した。

「では浪川くん、今日は話せて良かった。またいつでも来て下さい」

「ありがとうございます」

お父さんが部屋を出て二人きりになった。

「何話してたの?」

「ただ咲耶の話しを聞いてた。小さい頃の」

咲耶の顔が暗く沈む。

彼女が生きて来た過去は楽しかっただけじゃなかった。辛いことばかりだったのかもしれない。相手の意思はそこにはなくても、咲耶は傷ついて来た。
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