修羅と荊の道を行け
「出会ってから日は浅いですけど、私彼を誰よりも愛しています」

自分の想いを切々と語っているけど、その姿は典型的な恋に恋する乙女だ。

私と氷樹先生はそういうのを嫌という程見てきているから、氷樹先生なんて目が哀れなものを見る目つきになってきてる。慈悲深いというか、そんな目。

「何かおっしゃらないの?」

「私からプリンセスにお伝えすることはありません。お好きなように」

「あなたは和樹さんを愛していらっしゃらないの?」

「愛してなかったら、とっくに見限ってもっと優しくて約束をきっかり守ってくれる男と結婚してるはずです」

「氷樹!!」

初めて彼氏が言葉を発した。

「その男のあだ名は外面良男(そとづらよしお)なんです。後輩の子が教えてくれたんですけど、ピッタリだと思っています」

氷樹先生はどこか感情押さえた声で淡々と話す。

「仕事だけは出来るみたいですけど、それ以外の気配りはまるでないし、約束は仕事だ、仕方ないで破るし、そんな男で良いならどうぞ」
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