修羅と荊の道を行け
と、のしも付けてやるから持っていけと言わんばかりの氷樹先生の言葉にお姫様の顔が曇る。

「愛していると言っていながら、どうして手を引くような事をおっしゃるんですか?」

「仕事第一の和樹くんが、仕事のためにあなたと恋人になるなら私はどうすることもできません。それに…」

もうくたびれました。

と氷樹先生が呟いた。

「約束してご飯を作って待っていて来なくて。いつもドタキャン。不安で怖い夜もずっと一人で」

そっとその手が下腹部を抑える。氷樹先生にとってあの事は同じ女の私が思う以上に暗くて重いものを彼女の中に落としているようだ。

「氷樹…すまない」

「プリンセス。私には彼の未来も自由も縛る権利はありません」

その言葉には彼に対する。別れの言葉のようなものに聞こえた。

氷樹先生の肩に思わず手を置いた。
< 228 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop