修羅と荊の道を行け
咲耶の白い肌が夜陰に冴える。空を見ると、丸い月が出ていて淡い光がオレたちを照らす。

月光を浴びる咲耶は酷く神聖なモノに見えて、急に腹の奥が心細くなる。

「咲耶」

咲耶の肩を掴んで引き寄せた。オレの腕の中に入れてグッと力を入れて抱きしめた。

「どうしたの?」

「ん?なんとなく」

何となくじゃない。咲耶がオレの知らない場所に行くんじゃないかって子供みたいなことを思ってしまった。神様の名前を持つ咲耶がオレを置いてどこかへ行ってしまうと。

「変なの」

「寒くないか?」

「ぎゅうされてるから平気」

ぎゅうってなんだぎゅうって、可愛いな!海に叫びたくなるだろうが。

「あ、そうだ。プレゼントあるんだよ」

咲耶が思い出した様に、コートのポケットを探った。

「これメリクリ」

差し出されたのは手の平サイズの小箱だった。

「開けて良いか?」

聞くと、小さく頷いた。

開けると、。バングルタイプの時計だった。一見アクセサリーの様にも見えるが、シンプルで使い勝手は良さそうだ。
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