修羅と荊の道を行け
ゾワッと来て、渡辺さんから離れた。

「何するんですか!」

「ここで私が男だったら拳が飛んで来るんでしょうけどね」

「…」

「それがあるから、デスクの下で寝るなんてこと出来たんでしょうね。狼の群れの中に入った羊が、実は狼殺しの異名を持ってたってことだもの」

渡辺さんは呆れた顔をした。

狼殺しの異名?

「でもそろそろ止めた方が良いわよ。ただでさえ、エロい身体してるのに、それが男が出来たら、自分達も大丈夫かもって思う馬鹿者が増えるだろうから。無駄な死者を出す前に、折角、男女別の仮眠室を社長が作ってくれたんだから面倒臭くてもそっちで寝なさい」

「おっしゃってる意味が」

「全く、どうしてこの子は自分のことにそこまで無頓着なのかしら!良い咲耶、あなたは普通以上にモテる人間なの!男というカテゴリーをつけなければ、人当たりは良いし、可愛い顔をしてもそれを鼻にかけることもない」

渡辺さんはどんどん近づいてきて、まるでお説教をされてる気分になってくる。
< 308 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop