修羅と荊の道を行け
「何かずるい…」

そう呟いて咲耶がギュッと唇を噛んだ。

「何が?」

「だって話し聞いたら、父さんの方が浪川くんと会ってるみたい。浪川くんは私の彼氏なのに…」

胸をハートの矢で打ち抜かれる様な衝撃が走った。何だこいつのこの可愛いさ、頭の中でのオレはこの部屋の中をのたうち回っている。

コイツの可愛さに殺されそうだ。

クールぶってはいるが、頭の中ではこんなんだ。絶対、咲耶に見せられないな。

「当たり前だろ。オレは咲耶の彼氏で、咲耶はオレの彼女だ」

「うん」

「お父さんは咲耶の家族だし。大事にしたって悪くないだろ」

「…うん」

「お父さんは咲耶を心配してる。疲れた顔して帰って来ても、着替えてすぐに仕事に戻って行くから…それを心配してる。でも咲耶は言わないだろ」


咲耶のお父さんは会っても咲耶のことを話してくれた。自分のせいで、咲耶が家族から離れてしまったことを後悔している。
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