修羅と荊の道を行け
「咲耶、起きろ。少しでも水分とんねぇと」

軽く頬を叩くと、咲耶が少し目をあけた。

「これ、飲め」

口にペットボトルを当てて、少し傾けても、飲もうとしない。人前だが、自分で中身を口に含んで、咲耶の唇を塞いで口移しで飲ませた。

コクりと喉が動いたのが見えた。

「おいし」

「良かった。もう少し飲め」

ペットボトルの半分を飲んだ。

「奥様はもう大丈夫そうですね。また何かありましたら、フロントまでお電話下さいませ」

「ありがとうございます。すいません何から何まで」

ここに来てから、何度も予想以上に世話になっている。

「良いんですよ。にしても奥様と仲がよくていらっしゃいますね」

水を飲ませるためとはいえ、人前でキスしちゃったしな。

「惚れてますから」

はっきり言えば、逆に仲居さんの顔が赤くなった。
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