修羅と荊の道を行け
表情が子供みたいにキラキラしてる。

「咲耶のおばさんみたいに美味いとは限らないけどな」

「そういうこと言わないの。美味しい料理は良い人間を作るって言うよ。浪川くんは素敵な人ですよ」

また一つ心を打ち抜かれた。無自覚って本当怖い。

チェックアウトまでのんびりして部屋を出た。


一階に下りるとカウンターに咲耶の上司の渡辺さんがいた。

礼を言おうと少し、足を早めると、咲耶がグッと腕を引っ張られて廊下に押し戻された。

「何?どうした?渡辺さんに挨拶したほうが良いだろ!」

「挨拶は大丈夫!それより渡辺さんの隣にいる奴が問題なの!」

「は?」

廊下から少し顔を出して渡辺さんを見ると、隣に背の高い男が立っていた。

その顔は、初日に大浴場で知り合いになった姐さん女房を貰った男前がいた。

「あれ?あいつ渡辺さんの旦那?」
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