修羅と荊の道を行け

｢とんでもございません。お客様が心地よく過ごしていただくのが私どもの仕事でございます｣

｢色々ありがとうございました｣

咲耶が何度も頭を下げていると、女将さんも出てきた。

そして

｢おはようございます。奥様のお顔色もよろしいようでございますね｣

｢大変お世話になりました｣

また同じことを咲耶は繰り返した。

｢あの、失礼ですが。奥様は吾妻詩織(あがつましおり)さまのご家族の方ではありませんか？｣

咲耶が目をパチクリとした後に、ニッコリと笑って、祖母ですと答えた。

｢あぁ、やはりそうでございましたか。お祖母様のお顔にそっくりでいらっしゃるのでもしやと思い。不躾をお許し下さい｣

｢いえ。祖母を知っている人に会うのは嬉しいです｣

｢お祖母様ののファンなもので。何度もこちらに来て頂いんです。お元気でいらっしゃいますか？｣

｢はい。今は、岩手に移って祖父と仕事をしてます｣