修羅と荊の道を行け
「そうでございますか。またお近くにいらっしゃる時にはお寄り下さいとお伝えくださいませ」

「はい。温泉好きの祖母に必ず伝えます」

咲耶の顔は誇りに満ちていた。そのお祖母さんのことを本当に誇りに思ってるんだと感じた。


旅館を出て車に乗ってから改めて聞いて見た。

「咲耶の祖母さんってなんかの職人か?」

「うん。父方のお祖母ちゃんは友禅作家なんだ」

「友禅っていうと着物か」

「そう。吾妻ってのは旧姓で今はペンネームみたいなものだよ。仕事とプライベートは分けたいって人でね」

「今は岩手にいるつったか」

「お祖父ちゃんと岩手に旅行した時に、すっかり気に入って、帰って来なくなっちゃった。その場で家を買って、荷物を送って寄越せって電話が来てそれっきり」

「すげえな」

「どっちも職人だからね」

「祖父さんも何か作ってんのか?」

「お祖父ちゃんは陶芸家だよ」

「五百蔵玄辰(いおろいげんたつ)っていうんだけど」
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