修羅と荊の道を行け
「母さん、千尋の車あるけど帰って、」

話しに出ていた兄が帰ってきた。浪川万里、28歳。現在、高校教師。

「おお、マジで咲太郎じゃん」

そう聞こえた瞬間、兄貴が後ろに倒れた。

「もう一回、その名前で呼んで見ろ、万里子。蹴散らすぞ」

咲耶の低い声がリビングに響いた。

咲耶が兄貴の足を払って、すっ転ばしたんだ。見事な足払いだ。

「あはは、学習しないお兄ちゃんね」

母親は笑っているが、我に返った咲耶は真っ青になっていた。
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