修羅と荊の道を行け
荊道13
咲耶の家に突然呼ばれた。断る理由なんてなかった。正月以来、お互い忙しくて会っていなかった。
咲耶は翌日休みだという、すぐにそれに合わせて有休を取った。
「珍しいな有休をとるなんて、彼女としっぽりか?」
上司の軽口もサラリと聞き流せるくらい、オレのテンションは上がっている。
「模型と資料は完璧に仕上げてあります。あとはよろしくお願いします」
正月中に仕事をさせられたため、その原因を作った社長からいつ何時、有休を取っても許可すると言われていた。これを使わんでいつ使う。
今日のために完璧に仕上げた仕事を再度見つめ、落ち度のないことを確認する。
ここに用はない!
「浪川、あの…ここの花器なんだけど…」
「それは資料にかいてあるから」
千鳥に声をかけられたが、最近は彼女と一線を引いて接するようにしている。氷樹さんからの指摘を受けてこれ以上咲耶に不安させないための処置だ。
「わぁお、クールだね」
クールも何も咲耶と危うく別れそうになったのもオレが千鳥との関係を曖昧にしてたからだ。
人気だという少女マンガで、主人公の彼氏だった男が曖昧な関係を続けていた女との関係を絶つように主人公の友人に迫られるが、絶とう決意をしても出来ず、「邪魔をしないから縁を切らないで」と泣かれ、思わず一線を越えてしまい、事の最中に主人公が現れて、破局するという一部分があった。
これは少女マンガではないと思った反面、もっと早くこれを読んでいれば咲耶と喧嘩することもミゾパンチと踵落しを食らうことはなかったと後悔もした。
それから千鳥にははっきりとした態度を取っている。露骨過ぎるくらいに。
自意識過剰なのかもしれないが、未だに千鳥はオレを好きだという雰囲気を醸し出して来る。そのバイタリティーを他の男に向けた方が絶対に良いはずなのに。
何故、オレにこだわるんだ。
「千鳥ちゃんはある意味、刷り込みみたいなものだね。ガチガチに理想の男性像を固め過ぎてた所に理想に近い浪川くんが現れたから、見つめ過ぎて、好きのベクトルを変えれなくなったんだろうね。生まれたばかりの雛が、ぬいぐるみをだって親だと思い込むように」
マンガを貸してくれた氷樹さんがそう言っていた。
「その刷り込みはどうしたらリセット出来るんですか?」
「さあ、あんたが咲耶ちゃんだけしか見てない、咲耶ちゃんが大好き、咲耶ちゃん以外は女じゃない扱いをすれば良いんじゃない?心を鬼になさい!」
心を鬼にか。やるしかない、咲耶と添い遂げる為だ。
それを今、実行している。仕事以外では千鳥と余り話さないようにしたりと、前とは接しかたを変えた。
悪いと思う、友達として接してやりたいとは思うが、それより咲耶を失ってしまうということが怖いんだ。
さっさと職場を後にして咲耶の家に向かった。
五百蔵家のインターホンを押すと、咲耶が出迎えてくれた。
会わない間にまた可愛くなって、髪が少し伸びて髪を結っていた。ピンク色のシュシュがよくに似合う。
「お疲れ様、早かったね」
目眩がしそうになった。良い、こういうお出迎えを毎日してもらいたい。
「鞄預かるね。コートも脱いで脱いで」
新妻のように世話を焼いてくれる咲耶にキスをしたくなる衝動にかられるが、ここは五百蔵家本家だ。我慢だ。
「今日はね、水炊きなんだよ。知り合いから鶏肉をたくさんいただいてね、いっぱい食べてね」
「へえ、楽しみだ」
鍋の準備をしてある部屋に通された。普段はテーブルのダイニングで食べるらしいが、鍋の時はこたつのある部屋で食べるそうだ。
「おお、浪川くん、よくきたね」
部屋には咲耶のお父さんが上座に座っていた。
「お邪魔します」
「支度にもう少し時間がかかるから、父とお酒でも飲んでて」
咲耶に上座にあるお父さんの近くの席に座らせられた。
「メールではご挨拶しましたが、改めて明けましておめでとうございます」
と少し遅れたが、新年の挨拶をした。
咲耶は翌日休みだという、すぐにそれに合わせて有休を取った。
「珍しいな有休をとるなんて、彼女としっぽりか?」
上司の軽口もサラリと聞き流せるくらい、オレのテンションは上がっている。
「模型と資料は完璧に仕上げてあります。あとはよろしくお願いします」
正月中に仕事をさせられたため、その原因を作った社長からいつ何時、有休を取っても許可すると言われていた。これを使わんでいつ使う。
今日のために完璧に仕上げた仕事を再度見つめ、落ち度のないことを確認する。
ここに用はない!
「浪川、あの…ここの花器なんだけど…」
「それは資料にかいてあるから」
千鳥に声をかけられたが、最近は彼女と一線を引いて接するようにしている。氷樹さんからの指摘を受けてこれ以上咲耶に不安させないための処置だ。
「わぁお、クールだね」
クールも何も咲耶と危うく別れそうになったのもオレが千鳥との関係を曖昧にしてたからだ。
人気だという少女マンガで、主人公の彼氏だった男が曖昧な関係を続けていた女との関係を絶つように主人公の友人に迫られるが、絶とう決意をしても出来ず、「邪魔をしないから縁を切らないで」と泣かれ、思わず一線を越えてしまい、事の最中に主人公が現れて、破局するという一部分があった。
これは少女マンガではないと思った反面、もっと早くこれを読んでいれば咲耶と喧嘩することもミゾパンチと踵落しを食らうことはなかったと後悔もした。
それから千鳥にははっきりとした態度を取っている。露骨過ぎるくらいに。
自意識過剰なのかもしれないが、未だに千鳥はオレを好きだという雰囲気を醸し出して来る。そのバイタリティーを他の男に向けた方が絶対に良いはずなのに。
何故、オレにこだわるんだ。
「千鳥ちゃんはある意味、刷り込みみたいなものだね。ガチガチに理想の男性像を固め過ぎてた所に理想に近い浪川くんが現れたから、見つめ過ぎて、好きのベクトルを変えれなくなったんだろうね。生まれたばかりの雛が、ぬいぐるみをだって親だと思い込むように」
マンガを貸してくれた氷樹さんがそう言っていた。
「その刷り込みはどうしたらリセット出来るんですか?」
「さあ、あんたが咲耶ちゃんだけしか見てない、咲耶ちゃんが大好き、咲耶ちゃん以外は女じゃない扱いをすれば良いんじゃない?心を鬼になさい!」
心を鬼にか。やるしかない、咲耶と添い遂げる為だ。
それを今、実行している。仕事以外では千鳥と余り話さないようにしたりと、前とは接しかたを変えた。
悪いと思う、友達として接してやりたいとは思うが、それより咲耶を失ってしまうということが怖いんだ。
さっさと職場を後にして咲耶の家に向かった。
五百蔵家のインターホンを押すと、咲耶が出迎えてくれた。
会わない間にまた可愛くなって、髪が少し伸びて髪を結っていた。ピンク色のシュシュがよくに似合う。
「お疲れ様、早かったね」
目眩がしそうになった。良い、こういうお出迎えを毎日してもらいたい。
「鞄預かるね。コートも脱いで脱いで」
新妻のように世話を焼いてくれる咲耶にキスをしたくなる衝動にかられるが、ここは五百蔵家本家だ。我慢だ。
「今日はね、水炊きなんだよ。知り合いから鶏肉をたくさんいただいてね、いっぱい食べてね」
「へえ、楽しみだ」
鍋の準備をしてある部屋に通された。普段はテーブルのダイニングで食べるらしいが、鍋の時はこたつのある部屋で食べるそうだ。
「おお、浪川くん、よくきたね」
部屋には咲耶のお父さんが上座に座っていた。
「お邪魔します」
「支度にもう少し時間がかかるから、父とお酒でも飲んでて」
咲耶に上座にあるお父さんの近くの席に座らせられた。
「メールではご挨拶しましたが、改めて明けましておめでとうございます」
と少し遅れたが、新年の挨拶をした。