修羅と荊の道を行け
修羅道13
プロポーズをされて、受けた次の日、甘い雰囲気なんてしてる場合ではなく、妹の尻拭いの為に学校に行かないといけない。芝居なんて無縁の父親を行かせるわけにも行かず、私がでた。

会社面接の時にだけに来た、スカートスタイルのスーツを来て、真央花と家を出た。本当なら浪川君と楽しい休日を過ごすはずなのに、

「待ってるから、急がずな」

一応、妊婦を乗せているから安全運転で学校に向かう。

「まずはちゃんと謝りなさいよ」

「分かってる」

分かってるなら、こんなことしないだろうと言い返したくなるが、何も言わなかった。

真央花は、現実から逃げてるだけなんだ。目的もないまま、多分、自分への当てつけのように、進学校に進んで目的のない大学受験に意味を見失って、訳が分からなくなったんだろう。

恋に逃げたというのが、正しいのかもしれないが、これも彼女が選んだ道だ。

母親になって子を育てることも未来としての一つだ。

一個人としてならその生き方も一つの生き方だと彼女の選択を認めただろうけど、姉としては、そうはいかない。

それに、彼女の中に渦巻くのは、もっと根本的なことだと分かっていた。

「父さんは、真央花が男だったら良かったなんておもってないよ。真央花が生まれてきて一番嬉しかったのは父さんなんだから」

「そんなことない。お父さんはずっと男の子が欲しいって…。だから、お姉ちゃんをおばちゃんのうちに預けたんでしょ」

真央花は父親に必要とされてないという劣等感のようなモノを抱いてる。分かってはいたが、こういう形で反発してくるとは思わなかった。

「おばか。父さんは私を男以上に男らしく育てたって思ってるから、真央花が女の子で良かったって思ってるんだよ」

「じゃあなんで、咲耶お姉ちゃんをおばちゃんの家に預けたの?」

これは高校生のこれから母親になろうとする相手に言ってもいいのかと考えたが、後から聞かされるよりは良いだろう。

「父さんもあんたたちの世話のせいってしたのはまずかったと思ってるらしいけどね。私も大人になってから聞いた話しなんだけど、真央花が生まれた頃ね、おばちゃんは赤ちゃんを亡くしてて、もう子供は望めないって言われて精神的に弱っててね。それで、おばちゃんに懐いてた私を預けて、見張りというか、精神的安定剤の代わりっていうかな?」

その事実を知ったのは、高校卒業の時だった。色々知って少し悩んだこともあったけど、受け入れた。父のことは苦手だけど、父も悩んでいたと言うことは分かる。

真央花がお姉ちゃん、と呼んできたので、何?と返事を返した。

「私、ちゃんとする」
「そう。それともうひとつ、言うことあるんじゃない?」

生きていく中で大事な言葉の一つ。

「ごめんなさい」
「うん。帰ったら、みんなに言うんだよ」

それ以上は何も言わなくてもいいだろ。


学校の先生には、姉妹ならではの外面の良さ全開で頭を下げて、卒業だけはさせて欲しいとお願いした。
成績は悪くなかった真央花が受験を辞めるのを先生は残念がってくれた。
なんだか騙している気がして色々心苦しいところはあったけど、無事に終わった。

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