修羅と荊の道を行け
店の女将はよくオレの話しを聞いてくれる。

恋愛の話しなど、同僚にできるわけもない。

あんな人の恋を酒の肴にしようとしている連中に相談できるわけない。

オレの身分も知らない、ただの馬鹿な男だと思ってくれる女将さんのほうがずっと気楽で頼れる。

器量も気立ても良い女将さんはどことなく咲耶に雰囲気のようなものが似ているせいだろうか、彼女の前なら咲耶が好きだと声がでた。

「その年上のお嬢さんとはいくつ離れてるんだったかね?」

「5つ。28歳」

「いい年だね。私の姪っ子と同い年だ」

「女将の娘なら結婚してんだろ?」

「いいや。就職先がないと騒いでたら、今度は嫁の貰い手がないって兄が騒いでるよ。長女だから婿取りなんだけどね」

「そこも一緒だ」

咲耶は三人姉妹の長女だ。オレとは逆だ。

オレは、6人兄弟の末っ子だ。
< 6 / 432 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop