修羅と荊の道を行け
「あー怖かったぁ」


きりの良いところで、私はゲームを止めた。

「良いのか?」

「うん。だってもう帰らないと、浪川くんの寝る時間が遅くなっちゃう」

「泊まって行けよ」

浪川くんがグッと手を握った。

「でも…」

「頼む。もう少し、一緒にいたい。ダメか?」

ダメか?と犬がお預けを待っている様な顔で見つめられた。

何か弱いなぁ。

「良いよ。でもまだ、心の準備が出来てないし」

「大丈夫だ。そばにいてくれるだけで良い。言っただろ。怖いことも、痛いこともしないって」

「うん…」

「また会えない日のために、咲耶をいっぱいにしておきたい」

私もそうかもしれないと思った。

握った手を握り返すと、私の気持ちが伝わったのか、笑ってくれた。
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