LOVERS -Girls Side-
こんなにも褒められると、恥ずかしさでちょっと顔を俯ける。
「いやぁ~、マジで羨ましいぐらいの器用さ」
「そういうあんたは、少し春香を見習って女の子らしくなったらぁ?」
「はい!?」
「勉強もダメで、普段暴れまくってるあんたは、意外性がないと…彼氏も出来ないわよ」
あ…また景子ちゃん…そう言い方―――。
そっと顔を上げると、景子ちゃんがひとみちゃんを見ていた。
その視線は少し意地悪そうに目を細めて―――。
「ちょっと、景子。意外性って何よ」
「ギャップよ、ギャップ。"あっ意外と料理うまいんだー"とか"意外と女の子らしいこと出来るんだぁー"とか。それがひとみには」
言葉を途中で止めて、景子ちゃんがひとみちゃんを少しの間見つめて―――。
「なっ何よ。途中で話止めないで」
「け…景子ちゃん?」
「………」
私が声を掛けてみても、景子ちゃんはしばらく黙ったまま―――。
「景子ちゃん?」
そして、ようやく口を開いたかと思えば、盛大な溜息を吐く景子ちゃん。
「はぁー。ひとみには、無理だわ」
「そんだけ溜めておいて"無理"って何よ!?」
「ん? ひとみには"一生"春香のようには出来ないってこと。ひとみに意外性は望めないわね」
「むっかつく…」
眉間にいっぱい皺を寄せて、頬を大きく膨らませたひとみちゃんは、足をバタバタと暴れさせている。
「景子だって、人のこと言えないくせに!」
「私はひとみと違って、一通り出来るわよ? どっかの誰かさんみたいに、激マズのカレーなんて作ったことないし」
「うっ…そ…それは! 水の量を間違えただけじゃん!」
「具材が全部、生煮えだったみただけど?」
「なっ何故、そこまで知って…」
ひ…ひとみちゃん…。
箱の裏に作り方…ちゃんと書いてあるのに…。
どんなカレーを作ったんだろう…。