LOVERS -Girls Side-


 眉間いっぱい皺を寄せて、恐ろしいほどの形相をした―――。

「……けっ…景子ちゃ…ん」

「け…景子…」

「景子……さ…ん」

 2人共、さっきまでの勢いは何処かへ飛んでしまっていったみたいで、その場に硬直したまま顔を引き攣らせて景子ちゃんをじっと見つめている。

「あんたたち、いい加減にしないと―――どうなるか、分かるわよね」

 静かな雰囲気の中、景子ちゃんの何処かひんやりとした声が、目の前の2人には一番の薬のよう。

「「はい…すいませんでした………」」

 2人は声を揃えて、シュンッと頭を下げて景子ちゃんに謝る。
その姿が、一回り小さく見えてしまうのは私の気のせいかな。

「ったく! 毎日、毎日、こんなくだらない事で、怒鳴らせないで」

「なら、怒鳴んないでよ」

「なに? 今なんか言った?」

「いえ、別に」

 何だか少し重苦しい空気が漂う中、静かだった教室内が徐々に騒がしさが戻ってきた時だった―――。

「あれ? これって…何?」

 翔ちゃんが机に置いてあるモノを手に取って、マジマジと見つめて聞いてきた。

「あぁ、それ? それね、春香が作ったんだって。すごくない?」

「うぇっマジで! 春香っち、作ったの? これ!!」

「えっ…うん…」

 スゲースゲー―――って、あのキーホルダーを360度見回しながら、翔ちゃんは連呼。
でも、その声のボリューム…ちょっと…下げてほしい…なぁ。

「こういうのは、やっぱ春香っちだよなぁ」

 キーホルダーから視線を移して、ひとみちゃんの姿を目を細め見る翔ちゃん。
その視線に気づいたひとみちゃんが、怪訝な顔つきで翔ちゃんを見上げる。

「なによ、その顔。言いたいことあるなら、言えば」

「いや~、べっつに~」

 少しイラつらついた様子のひとみちゃんが言うと、翔ちゃんが鼻で笑い目を逸らした。


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