LOVERS -Girls Side-



まだ、先生来てないから大丈夫…だよね…?

 ちらりと確認をして、ひとみちゃんの机に置いてあったポーチを手に取る。

「ん? どした、春香っち」

「あっ…ごめんね、呼び止めちゃって。えっとね、これ…翔ちゃんに」

 ポーチの中から1つ取り出し、思い切って差し出す。

「うぇ! ななな何!?」

「男の子に…こんなものあげるなんて…って思ったんだけど…」

 翔ちゃんに差し出した手の平に乗せられたモノ。
それは―――ひとみちゃんと景子ちゃんにあげたものと同じキーホルダー。
それも、男の子バージョンで―――。

「うっわ、マジすげー!! 俺と同じ髪型に…同じ格好してんし!!」

「翔平の分まで作ったんだ!? 春香優しい…私なら、まずこいつの分なんて頭にないわ」

 席に着いたひとみちゃんが、自然と会話に加わる。

「翔ちゃんには、いつも…お世話に…なってるので…せめてものお礼で…」

「春香っち、世話になってんのは、こっちの方だってっ」

「そんなこと…。でっでも…やっぱりいらない…よ…ね」

 年頃の男の子が、こんなの持ってたら恥ずかしく思うのは当たり前で…。
しかも、お礼といってこういう安物をあげるのは、失礼だよね。

 顔を俯かせ、まだ手の平にあるキーホルダーをしまおうと手を引こうとした時―――スッと手の平からキーホルダーの感触が無くなったことに気づき、顔を上げる。

「春香っち、春香っち」

 にこにこと笑みを浮かべて、私の名前を呼ぶ声。

「ありがとなっ春香っち!」

 キーホルダーを持って、きらきら輝く眩しい程の満面の笑みを浮かべる翔ちゃん。
翔ちゃんの笑顔に嘘偽りはいつもないって思えてしまうのは、翔ちゃんは素直な性格だと分かっているから。
そんな翔ちゃんの言葉と笑顔につられて、私も自然と笑えた。
 その表情のまま、どういたしまして―――と言う代わりに小さく頷き、自分の席へと戻ろうと振り返った瞬間―――。

 ぼすっ!!


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