LOVERS -Girls Side-
鼻にちょっと鈍い痛み―――。
何だか、洗濯洗剤のような香りが間近で香る―――。
それに、目の前が真っ黒で…。
「大丈夫か」
頭上から、降ってきた耳に残る低い声。
恐る恐る見上げると―――。
「…っ!!」
私の思考が一瞬にして停止し、その場で身体が硬直。
それは、目に映った人物を見た瞬間だった―――。
「大丈夫、そうだな」
そう言って、私の横をすり抜けていこうとする―――長身が目立つ容姿と黒髪に、眼鏡を身に着けた―――東海林智信さん、その人だった。
―――っと、そこでハッと我に返って、頭2つ分以上くらいある東海林さんを見上げ、慌てて。
「すっ…すみ―――」
「結構勢いよくぶつかったからか? 鼻…赤くなってる」
続くはずだった私の言葉は遮られて、その代わりに東海林さんが自分の鼻を人差し指で示し言う。
その仕草に、私の事を言ってるんだと気づき、慌てて手の平で覆い隠す。
すると、東海林さんの口角がほんの少し上がった気がして―――。
えっ―――?
でも、東海林さんはいつもの無表情で、そのまま私の横を通り過ぎて自分の席へ向かってしまう。
あ…気のせい…だった…?
何だか、東海林さんの背中から目が離せない―――。
「こらっ高橋ー!!」