LOVERS -Girls Side-
背後から名前を突如呼ばれ、目を見開き振り返ったら、次の授業の先生が教卓に既に立ってこちらをじっと見つめていた。
「どうしたんだ? そんな所でぽーっとして。席に着けー授業始めるぞ」
先生の一言に皆の視線が一斉に私に集まったのに気づき、顔を俯かせて慌てて自分の席へと戻る。
でもその動きは周りにしてみたら、とても怪しい動きに見えたのかもしれない。
自分でもそう思ってしまう程、皆の注目を浴びていると感じたら、いつもこうなる。
「すっすい…ません…」
「よーしっ。授業始めるぞー。今日は昨日の続きのページだ。教科書の―――」
先生の声と一緒に、机に教科書とノートを慌てて取り出す。
それから、ポーチを机の中に一旦しまおうとしたけれど、閉め忘れていたポーチの口に目が止まり、閉めようとふと目に入ったのは―――。
………。
それを確認してそっと息を吐き、ジッパーを閉めて机の中に大切にしまう。
黒板に書かれ始める先生の字を見やりながら、教科書を開いて先生の話に耳を傾ける。
授業に集中しようとした間際―――。
ちらっと左斜めの1番後の席に視線を移す。
その先に―――。
今の授業とは関係の無い本を広げ、無表情で本に視線を落としている東海林さんの姿。
いつもいつも口数が少なくて、とても大人びた人が表情を変える事なんて滅多になくて―――。
周りの人達を寄せ付けない何かがあるけれど―――。
だけど、私は、私は―――。