LOVERS -Girls Side-


 そう言われて、ひとみちゃんと一緒に先生に相談しに行ったら、いいよ―――っと返答をくれてからというもの―――時々、この場所へと足を運んでる。
 お母さんがパートの休みの日だけに、こうして時間が許される限り弾く。
このことは、両親には話をしていない。
きっと言えば、両親は無理してまでもキーボードを購入したり、教室へ通うこともしようとする筈だから。
 唯でさえ、両親は周りの反対を押し切って10代で結婚をし、私が生まれて金銭的にとても苦労したんだと、時折お世話になっていたひいおばあちゃんに聞いたことがあった。
 唯一、ひいおばあちゃんだけが両親の味方だった人。
とても穏やかで優しい物言いのひいおばあちゃんは、もう…この世にはいないけれど、私が弾くピアノを喜んでくれてた。
 今はこうして、1人の空間で自由に弾ける事がとても嬉しく、時折そういった思い出を浮かべながら弾く。
この時間がとても好き。

 ♪~♪~♪♪♪♪…

「う~ん…やっぱりうまくいかない…。どうしたら…」

 今日は指があまりまわらなくて―――そんな自分に困り果てる。
いつもはもう少しうまくいく所で、今日は何ども何度も指が止まってしまう。
 ちらり―――と、時計に視線をふいに向けて、1つ溜息をもらす。

 もう一度やってダメなら…今日はもう帰ろう…。

 そう決めて、白い鍵盤の上に指をそっと置き、指先が鍵盤の上を踊りだそうとした時―――。

 ガラッ!!

 突然、開かれた扉の音に驚き、そっちへ視線を向けた。
途端―――私の胸の鼓動が大きく波打つ。

 ……ど…して………。

 心の中でそう呟き、目を見開きながら見つめる先には予想もしていなかった人物の姿が―――。

「やっぱりな」

 目が合い、ふいに呟かれた低い声に慌てて、熱くなった頬を隠すように目を逸らし顔を俯かせた。

 どう…して―――。
 どうして…ここに…東海林さん…が―――?


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