LOVERS -Girls Side-


 そうして、緊張のあまり椅子の音を大きくたてて、慌てて立ち上がり少し震える手で楽譜を閉じた。

「悪い…邪魔したか…?」

「あ……いえっ大丈夫……です」

 問いかけられたけど、私は顔を上げられずに頭を左右に振りながらそう答えるので精一杯。

「そう」

「………」

 楽譜を片付ける紙がたてる効果音だけが、私達の間にある沈黙を紛らわせてくれる。

 どう…しよう………。
ど…うし………よ…ぅ…心臓が………。

「もう帰んの」

「え!?」

 バサッバサッバサッ ドサッ

 突然、真隣から声が発せられて、驚いた拍子に口が開いたままの鞄を落としてしまった。
自分の足元に教科書、ノート、ペンケース、そして運の悪いことに先ほどリップを取る為に開けたチャックを閉め忘れたポーチの中身までも、散乱してしまい慌てて拾い始める。

 もう―――何で…私はこう……早く……早く…拾わなきゃ!!

 拾う間にも、ちらちら視界に入ってくる東海林さんの足元。
とろい奴―――って思われてる気がして、急ぐあまり拾い上げようとしたペンケースを誤って蹴ってしまう始末。

「あっ……」

 何やってるんだろう…私…。
どんくさいにも程がある…。

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