LOVERS -Girls Side-
ノート類を抱えて項垂れながら、ペンケースへ再び手を伸ばそうとした時―――長い綺麗な指先がすっと視界に入り込んで来た―――。
そっと視線を上げたら、ペンケースを手に私を見下ろしている瞳があった。
「どうぞ」
「………」
「……何? 俺の顔に何かついてる」
「…あっいえっ…すっすっすいませんっ」
差し出されたペンケースを半ば奪うように受け取り、鞄を拾い上げて抱え足早に音楽室を後にした―――。
絶対、変な奴だって…思われた…よね…。
お礼も言わないまま、逃げ出すように出てきちゃって―――私、最低だ…。
ペンケースを受け取る時、ほんのちょっとだけ触れた―――あの人の手に触れた指先がすごく熱い。
でもそれだけじゃない―――顔も…体全部が火照って頭がくらくらする。
―――男の人が苦手。
小さい時からそうだった。
それでも、好きな人が出来たときもあった。
だけど、近づくことも話をすることも出来なくて、いつもいつも遠くから見てるだけで…想いを告げることは一度も出来なかった。
だから、私みたいなのは恋なんてしない方がいいって…そう思うようにしてた―――。
それなのに―――。
"あの時"から―――あの人を知らずの内に自然と目で追ってしまってた。
絶対に叶わない恋に―――私は落ちてしまったの―――。
* * *
「はぁ…どうしよう…」
朝から、ずっとため息が漏れてばかり。
足が重く、とぼとぼと学校の門をくぐり抜けた、その時―――ポンッと肩を叩かれ、視線を上げる。
「おっはよー! 春香」
「あっ…おはよう…ひとみちゃん」
今日は珍しく少し―――だいぶ早い登校のひとみちゃんは、いつも通りの元気いっぱいな笑顔。
でも、その反対に私はというと―――。
「ありゃ? 元気ないね、どした? 新たな悩みごとでも出来た?」
「う…ん…」
「私でも、協力できることならするからさっ。話してみてよ、わ・た・し・にっ」
ひとみちゃんは、自分の胸に手のひらを当てて満面の笑みを浮かべる。
そのひとみちゃんの笑顔に、少し心が安らぐ。
「う…ん…実はね…」