LOVERS -Girls Side-




「ひとみ、珍しく私より早く来てると思ったら…何してんの」

 私達より少し遅めに登校してきた景子ちゃんが、廊下にしゃがみ込むひとみちゃんを見下ろし言う。

「ん~? 探し物~」

「探し物? 何、あんた何か無くしたの?」

「違う違う、私じゃなくて。春香の大切なものを無くしちゃったらしくて…だから、それに協力してんのっ」

 景子ちゃんはへぇ―――っと声を出し、その背後にいた私の傍に歩み寄って来た。

「春香、おはよう。大事な物って、一体何を探してるの?」

「おはよう…景子ちゃん。それが…お母さん達にプレゼントしようと思ってたマスコット…」

「えっ、昨日言ってた!? 学校に持ってきてたの!?」

「うん…」

「いつ、無くなったか覚えてる?」

「昨日…放課後ピアノを弾きに行って…帰ってポーチの中を見たら、見当たらなくって」

「でっ心当たりは? 何処かで出して置きっぱなしってことも」

 景子ちゃんも心配そうな表情を浮かべて問いかけてくる。
多分、私がそんな顔をしちゃってるせい…。

「それがね、帰る時に鞄を落として中身をばら撒いちゃって…たぶん、その時かなって…」

「ピアノってことは…空き音楽室だよね。そこは、探した?」

「さっき、ひとみちゃんと行って探してみたけど…」

 私達が話してる間にも、ひとみちゃんは人目を気にせずに廊下にしゃがみ込みんで、隙間とかゴミ箱の中を覗き込んでいる。

「よっし、私も探す」

「景子ちゃん…」

「1時間目始まるまで、あと15分…くらいしかないけど、休み時間も使って一緒に探そう」

 景子ちゃんは鞄を置かずに、ひとみちゃんと一緒になって廊下で捜索を始めた。
他の人からしたら、本当に大したものでも高価なものでもない。
 私の為にと、一生懸命になってくれる2人。
そんな2人の姿を見ていたら、その姿が少し滲み始める。

「春香、あっちの方見て来てー!!」

 廊下に響き渡るひとみちゃんの声に、気づかれないよう目元を拭い、大きく頷いて私もその中に加わった―――。

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