LOVERS -Girls Side-
* * *
1人でいつもの音楽室で隅から隅まで目を遣る。
翔ちゃんの首ねっこを掴んでひとみちゃんと一緒に帰って行くのを見送ってから、この場所に足を運んだ。
昇降口を出る間際まで、翔ちゃんが落ち込んでいて…。
その理由は寝坊したからとか、授業受けられなかったからではなくて―――。
「景子さんに会えなかったー!!」
―――から、らしいです。
がくり肩を落とした翔ちゃんを、面倒な奴だわ―――っと言うひとみちゃんがお家もご近所さんだからと、連れて帰ってくれた。
いつもどんな時も、景子ちゃんに夢中の翔ちゃん。
どんなに、冷たくあしらわれても無視されても―――めげずに景子ちゃんへまっすぐ想いを向けてく。
そんな翔ちゃんが、すごいなぁって感心してしまうの。
私には…そんな勇気ない…から―――。
「…やっぱり無い…よね…」
部屋の隅に置かれた古い机が並べられている場所の隙間を覗き込み、ため息1つつく。
その場で座り込み、力なく項垂れる。
「どうしよう…誰かに捨てられちゃった…かな…」
もし落としていたとしたら、この場所しか思い当たらない。
"あれ″は誰にも見せてない…ううん、誰にも見せられない―――。
今日私は―――2人に嘘をついてしまった。
無くしたといったものは、お母さん達にあげる予定のマスコットじゃない。
本当は―――誰にも見られたくない、誰にも見せられない。
それを見られてしまったら、すぐにバレてしまう―――。
「特に本人に…なんて…知られたりしたら…」
あの人の姿を思い浮かべて、想像しただけで頭が痛い。
2人にも話していない…あの時、ポーチに入っていたのは―――。
「…もう…諦めるしか…ない…よね…」
その時―――座り込む私の背後で、キュッキュッと音がしたと同時に―――。
「何を諦めるって?」
「…っ!!」
突如、掛けられた声に体が大きく反応し、脈拍数が一気に上がる。
そして、その場で一瞬だけ―――思考が止まった。