LOVERS -Girls Side-
「ひっひっひとみちゃん…つつかないでよ~…」
「だぁーって、春香が言わないんだも~ん」
「本当に何でもないよ~…」
「ふ~ん…。怪しい…けど、まっ許してやるか」
これ以上からかうと春香が泣き出してしまいそうで、つついていた指を離す。
でも、顔を赤くして恥ずかしがる春香が何だか可愛くて、ついついからかっちゃうんだよね。
私には無い可愛さが本当に羨ましい。
「あんた達は何をやってんの」
「あっ景子」
眼鏡をクイッと人差し指で軽く押し上げる景子が、私と春香をいつの間にか見下ろしていた。
その眼差しはきつめの印象とは違って優しげ。
「そろそろ授業始まるから、自分の席に戻りなさい」
「え~、まだあと5分あんじゃんよ」
「5分しかないの! ひとみっ、あんたの場合ちゃんと予習もしないと、あとで酷い目にあうわよ」
うわっやばい! このままじゃ、いつもの通りの説教が始まっちゃう!
「はぁーい、はぁーい! 分かりましたっ」
「何、その適当な返事」
目を細め、私をジットリと見つめてくる景子の視線に、椅子から立ち上がって背筋を伸ばした。
「はい! 分かりました!」
「良いお返事です」
「それじゃあ、席に戻らせて頂きます!」
「今日は、1日ちゃーんとお勉強して下さいね」
「うっ………はぁーい」
景子の満面の笑みが怖くて、この笑顔に私にしか見えない圧力がある―――がするのは気のせいか…な…。