君は愛されているんだよ
結局,うちのクラスからは,田中祐里一人だけが,立候補者として出る事になった。他のクラスからは,1クラスに2,3人は立候補しているだけに,祐里が生徒会になれる可能性は低いと感じていた。

生徒会のメンバーは,生徒の投票によって決まる。
立候補者は立候補者で,PRするためにプラカードを作らなきゃならないんだけど,祐里はその事で悩んでいた。

「何をPRしたらええんやろぅ......。」
自分の良い部分が見出せない祐里は,毎日の様に私に相談して来る。
勿論,私も祐里には色々とアドバイスしたいけれど,むしろ,祐里の良い部分は有り過ぎて困る位だ。二人で何度も何度も悩んで,悩み続けた結果,泣き崩れた事もあった。

「もう,私,生徒会の立候補なんかせぇへんかった良かったわぁ!!!!!!」
祐里の口から出るのは,立候補者にならなければ良かったという,ネガティヴな考え。「何でそんなに消極的になっちゃったの?」と問い掛けても,ただ泣いているだけで返事は無かった。

でも,二人で泣いている時に,向こうから誰かの叫び声が聞こえて来た。

「どうしたの?」
それは,自殺未遂をやって,奇跡の生還を成し遂げた,秀樹だった。
秀樹は,今日退院したばかりだった。傷も大分小さくなって,すっかり元気になっていた。

「あのさぁ,二人はどうして泣いてるの?」
「実は......。祐里ちゃんが生徒会に立候補する事になったんだけど,自分のどの場所をPRしたら良いのかが解らなくって―――。」
「それだけで泣いちゃったの?祐里ちゃんだったから,俺を助けてくれたって言う良い部分が有るじゃ無いか。それに“神様の事”もすっごく詳しく知ってるから,其の事をPRしたら良いんじゃ無い?」
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