ネバーランドへの片道切符
シンプルな時計。
結構革ベルトの部分がボロボロになっているし、時計の秒針が動いていない。


「腕時計、止まってる」


これを気に鬱話から彼の腕時計の話にそらす。


「電池無くなったんだな」


動かない時計を見つめてポツリつぶやいた。


――あ、落ち込んでる。


ただ時計を見た表情なのに、私のコトとは表情の変わりようが違う。


「お気に入りの時計?」


昔っから見かけてきたこの腕時計。
興味本意で訊ねてみた。


そしたら――


「高一の誕生日にマユから貰ったんだよ……明日帰り時計屋に行かないと」


そう切なそうに笑う。
あ、高一だっけ、私の家に遊びに来たとき、マユに告白して振られたの。


彼が姉の部屋に来ているって知って、隣の自分の部屋の壁に耳を当ててこっそり聞いてたんだよね。


このときばかりは、本当に家の壁、薄くて良かったと思ったよ。


そんな古傷に浸かっている彼には失礼だと思うケド……
哀愁漂う笑み。私の瞳には、とてもキレイに映っているよ。


――あー私色に、汚したくなる。


だいたいなんで、マユは、振った男に対して、常に身につけるれるプレゼントをあげて喜ばせるのよ。


まるで、自分のだからって、首輪を身につけさせるようにさ……
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