ネバーランドへの片道切符
「ごめん、つい」


ハッと我に帰ったように、私からすぐに離れてしまう。


――ついって、なに?


私がプレゼントをあげたことに、嬉しくて、つい抱きしめた?


――それとも


姉と重ねて、嬉しくて、つい抱きしめたの?


「そういえば、ねーちゃんからプレゼント貰った?」

「いや、この歳でプレゼント交換しないだろ」


――あの抱擁は、姉に重ねたんだ。


私はどこまでも、姉の身代わり。
それでもいいと私が選んだ道。


だけど、このプレゼントだけは、私を見て欲しかった。


「そっか残念」


口では残念なんて言って親身になってあげるケド。
残念なんて思ってない。


「別にいいよ。それより、今、プレゼント貰えたのが嬉しい」


ニコリと微笑み、喜んでくれた。


良かった。あの喜びを表す表情は、いつも姉以外に向けるものだから、今は私を見てる。


「開けて見て」


そう言えば、彼は丁寧に包装紙を取りにかかる。


「G-SHOCKだ!って流石に高校生には高かっただろ。僕、金出す」

「別に、旧モデルだから……金出すって止めてよ。私がみっともなくなる」


確かに、旧モデルだけど一万手前の値段で、高校生の私には高額なプレゼントになった。


だけど、最初に時計を見た瞬間の喜んでいた顔。


それだけが、見たくて買ったのに、お金を気にして、心配した顔しないでよ……
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