ネバーランドへの片道切符
「イイから気にしないで、早くつけて」

彼は頷くと、姉から貰った腕時計を外して、私があげた腕時計をつける。


――やっぱりこっちの方がいい。


姉から貰ったアナログ時計より。
スポーツが大好きな彼は、機能性も良いデジタル時計の方が似合うと思って買った。


「気にしているなら、日頃使ってくれれば満足だから」


コレが私のやってみたいこと。
彼がこの時計を着けることで、姉より私を選んだと目で認識出来る。


だいたい、振った男に餌を与えて、まだ意識を持たせるようなことするなって話なんだ。


今年の誕生日は、姉の毒牙がなくて良かった。


これで、私が入る隙が出来るハズ。
いつか、姉じゃない私を見て貰えるチャンスがきっとある。


「ありがとう、大切にする」


下心があるプレゼント、それに気付かず彼は、笑顔を見せた。


その表情“私の向けて”自然に出てきた笑顔は、今までに一番素敵だったかもしれない。
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