ネバーランドへの片道切符
情けない夢をみるのはもう飽きた
彼とマユが中学校に上がった頃。


彼の一人称が『俺』だった時期があった。


周りは『俺』って使っている人が断然に多いし、
『僕』って中学生にはお子様な印象を与え、からかわれる要因にもなるだろう。


だけどマユは、『俺』なんか似合わない『僕』のままにしろと彼に言った。


私は『僕』より『俺』って人称が好きだし、
似合っていると思ったし、そんなことを姉に指図を受ける必要はないと思ったから、
別に『俺』のままでいいじゃんと彼に言ったケド。


でも彼は、私の言うことも、自分の考えも曲げて、マユの要望にこたえた。


この時から、彼にはマユしか見えてなかった。


彼とセフレになってからは、私は一度も名前を呼ばれたことがなかった。


夢から覚めないように、私の名前を呼ばないようにしていたんだ。


彼の全てはマユで出来てる。
初めから分かりきっていたのに……


私は悔しくて、行為中に彼から「名前を呼んで」と
求められるとき以外は、彼の名前を呼ばないように意識したんだ。


――バカだよ、ほんとにバカだよ私は……


傷つくの覚悟して、あの腕の中にいることを決意したのに……


思っていた以上に傷ついている私がいた。
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