ネバーランドへの片道切符
「本当に?」

「だって、話す機会ないし、人を脅す性格じゃないから」

「あ、ありがとうな……それと、ごめんな変なの見せて」


私の言葉に、安心して、安堵のため息をした彼の表現は、先ほどよりは、健康的な色あいに戻っていく。


「ねーちゃん、今頃カレシに抱かれてるよ」


家に真っ直ぐ帰らないのは、
今日のように、この時間帯に、早く家に帰ってきたら、
姉の、甘ったるく、高らかな声が聞こえたから――


二人には、私が帰ってきたってバレないけど、
二度と身内のあんな声は聞きたくない。


彼が、眉間にしわを寄せて、私が口にした言葉で、傷ついた顔をしてる。


マユが、自分以外の人に抱かれているのを想像して、勝手に、心を傷ついている。


「マユのこと、好きなんだよね。抱きたいんだよね」


黙っているのは、私の言っていることが、当たっているから。


嘘をつけない幼なじみ、頭はいいのに、こんな性格で随分苦労をしていることは知っている。


まあ、黙っているのが、彼の抵抗なんだろうけどね。


ホント、きっぱり
「恋愛感情じゃ見られない」って、
随分前に振られたのに、まだ好きな気持ちを、忘れられないんだね。
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