どこかで誰かが…
「ねえ、最近、佳菜子のモテ期はどんな感じ?」

「だから!そんなの、はじめからナイから!」

「気づいてないだけだったらぁ?まーた、もったいない過去を引き摺って過ごすハメになるよ!」



そんなある日のことだった…


部活帰り、忘れものに気がつき、もう一度、反対方向の電車に乗った佳菜子。


学校の近くに住むゆっこに、課題を入れたバッグを部室まで取りに行ってもらえるようにメールで頼み、
駅に着いたら連絡することになっていた。


清瀬に持って来てもらうという手もあったのだが、
まだ、なんとなく気が引けてしまい、
そんな心情が、佳菜子に奇遇を呼んだ。


「堀口?」

「え?」


聞き慣れた声に振り返ると、

「高木くん!」

やはりそこだけは、オレンジ色に染まって見える。


「久しぶりだな!どうした、こんな時間に?」

「…」


途端に熱いものが胸に込み上げ…
きちんとした言葉にならない。


いつか会うことができたら、言ってやりたいことが幾らでもあったのに…

そして、

はっきりさせたいことも…

しかし、

高木が降りる駅まで、もう時間がなかった。

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