どこかで誰かが…
「元気か?」

「うん。」

「皆も?」

「うん。」

「…そっか。」

(もう駅に着く。どうしよう。)

「…」

(せっかく会えたんだから、なんか話さなきゃ!聞かなきゃ!)

「じゃあ、俺、次だから。」

「あ…うん。(本当に、ひと駅分を歩いててくれてたんだね。どうしてそんなこと…聞かなきゃ!)あのさあ!」

「ん?」

「…どうして?(何も言わずにいなくなったの?)一つ前の駅じゃ…」

「なんだよ!久しぶりに会ったからじゃん!」

「え、(そーじゃなくて…)」

「じゃあ、皆にもヨロシク!」

(だめ!ここで帰したら、また私、ずっと後悔する!でも、引き止めるワケには…、どうしよう…駅だ…)

その瞬間、

「高木くん!」


佳菜子はホームに降りていた。


「え…どーした?!」

「ちゃんと話がしたくて!だって、さよならも言ってなかったから!」

「…」

(あれ?さよならで…良いんだっけか?私…)

「そーだったな。」



電車から降りていく人々が、家路へと向かう中、
ホームのベンチに向かって歩く高木に付いて、
ふたりは、肩を並べて座った。

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