どこかで誰かが…
「あたし、佳菜子の友達なんですけど…」

「あ、はい。」

「佳菜子、今、彼氏がいないんです。」

「は?」

「スミマセン唐突に。あたしも、ついさっき知ったんですが、みお…なんちゃらって子、」

「未央里ちゃん?」

「そうそう!どうもその子、佳菜子があなたと会わないようにと、しょっちゅう合コンに連れ回していて…迷惑してるみたいなんですよぅ。だから、どんだけイケてる人なのかと思って!」

「…」

「あたしが面倒見なきゃ、いい加減、変な男の心無い誘いに乗ってしまうんじゃないかって程、とにかく未央里って子がしつこいらしくて、」

「あの、ちょっとすみません。」

「え?」


話の途中だと言うのに、片桐は厨房へと下がってしまい、

「あ、ちょっと!…あー、失敗か…」

渋々、二人の居る席に向かって、戻りはじめるゆっこ。

と、その後ろから、

足早に近づく足音が、あっという間にゆっこを追い越し…


「ちょっと、いいかな?」

「へ?」


もちろんそれは片桐で、
佳菜子の腕を掴むと、外へと連れ出して行ったのだった。


驚いた表情のゆっこと高梨だったが、顔を見合わすとニコッと笑い、自然にハイタッチをしていた。


それを見た、近くの席のほろ酔いの客も、
ピーピーと、指笛をならし、拍手をしだす始末。


何も知らない客と店員は、不思議そうに、そんな店内を見回していた。

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