どこかで誰かが…

「大学で足を故障してさぁ、今、スポーツメーカーの会社に勤めてるよ。」

「ふーん。」

「なんで？」

「どっかのチームにでも入ったかと思ってさ。」

「いや〜、ムズいだろ。」

「なかなか上手くイカねーよなぁ…普通は。」

「…なに？」

「おまえ、高木って覚えてる？」

「！え、おぅ。」

「あいつ今、会社のバスケットチームの選手なんだって。」

「へー。よく知ってんな。」

「勤務先が近くて、よく会うんだよ。俺、同じクラスで仲良い方だったから、この前、一緒に飯食ってさ、色んな話聞いたんだけど…」


その辺りから、清瀬の耳に、その話の続きは入ってこなかった。


何故か、
勝手に体が拒否をしたと言うか、他のコトを考えてしまっていたような…

一つ覚えているのは、軽い苛立ちを覚えたこと。


誰もが妥協しながら現実を見つめ、自分が置かれているの状況に慣れようとしているものと疑わなかった清瀬は、
身近に、夢を叶えた者がいることを知り、嫉妬せずにいられなかったのだ。


“自分と何が違うのだろうか？”


そう考えて、あまりよく知らない高木のことを思い出そうとしたのだが、

思い浮かぶのは違うコトばかり…

その時だった。