どこかで誰かが…

そう、この男の正体は、
佳菜子の家のそばにあるスーパーで働く、
佳菜子がお気に入りの、あの店員だ。


この会話からすると、
どうやら彼も佳菜子が気になっている様子で…


まさか、思いも寄らぬところで、それぞれの想いが交差していたとは…少し残念な気もする。


それは、その男が解雇通告を相談されて間もない日のことだ。


スーパーのバイトからの帰り道、空腹と疲れと眠気に襲われながら、ゆっくりと自転車を漕いでいた。


ふと、すれ違う人の横顔を見た時

「あ…」

佳菜子だと気がついた。


少し先まで行った所で足を止め、ブレーキをかけて足を着くと勢い良く振り返る。


声をかける絶好のチャンスだ。


（こんばんわ…なんて言っても、誰？って思われるだけだよな…）


そう躊躇っていると、佳菜子は携帯電話を取出し、誰かと話し出してしまった。


（あ。……っと…ちょっと待つか…？）


とりあえず、さり気なく道の端に寄り、メールを見るフリして待ってみることに…