どこかで誰かが…
そんなこんなで、結局、返事は、待ってもらえることとなった。


大沢の言っていた試合は、バスケ部の試合の日と重なっており、
応援に行くことなど、はじめから無理な話で………


「だって、私が応援に行かなくても勝ってるし!」

「でも、堀口が出ても負けたんだろ?」

「…」


バス停での清瀬との会話は、朝から佳菜子を不機嫌にさせた。


「ま、よーく考えてやってくれ。堀口にも色々あるだろうしな。」

「色々って?」

「…あ、バス来た。」

「わー、人影がすごいね。今日も暑そーだなぁ。」


これが、ツイてない一日のはじまりだった。



「あれ?何してんの?」


放課後、独りで机に向かう佳菜子を見つけ、高木が教室に入ってきた。


「今日の数学の小テスト…4点だったから居残り。」

「…」

「10点満点中だよ!」

「言い訳になってない。担任の教科じゃん。」

「だからだよ…私、数学って苦手科目なんだよね…」

「どこ?」

「え?」


高木は、佳菜子の前の席の椅子を引いて横向きに座り、問題を覗き込んだ。


「これはさ、まず…」


高木の説明は、一つ一つ解説しながら答えを導かせ、本人が解いた気分にさせる、上手な教え方だった。

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